養蜂場日記
ツバメと養蜂家
2010年5月30日 / 養蜂場日記
可愛らしいツバメも養蜂家にとってはとてもコワ~イ存在。特に子育て中のツバメ君たちにはお手上げ状態です。
今日もまた養蜂場の上を数羽のツバメが飛び交い始めました。「勘違いしないでくれよ、ここは君らの食卓じゃないんだよ~」、思わず心の中で叫んでいます。
5月、6月は新旧女王の交代の季節、新女王も婚姻飛行の行き帰りにツバメ君たちの襲撃に会い、命を落とすものが多くなります。養蜂家にとって新旧女王の更新はどうしても必要なこと、しかも、結構手間のかかることなのです。
せっかく誕生させた優秀な系統の女王蜂は何よりも大事なもの、それをあっさり胃袋に納められたのではこちらの気持は収まりません。
しかし、軽快に飛び回る彼らにはなすすべがなく、空を仰いでため息の毎日です。何かよい方法はないものでしょうか?
嬉しいお知らせ
2010年5月30日 / 養蜂場日記
蜂蜜をお送りする際の送料を、何とかもう少し安くできないかと考えておりましたが、実現しました。
6月から、現行よりもかなり安い料金でお送りできるようになります。
詳しいことが決まりましたら「最新のお知らせ」と「ショッピング」欄に掲載致します。
今後共、どうぞよろしくお願い致します。
三光鳥
2010年5月24日 / 養蜂場日記
午前5時30分―養蜂場到着。
早朝の養蜂場で爽やかな空気を胸いっぱいに吸い込みます。
鳥達の合唱も最高潮に達する中、ひときわ透き通った鳴き声が聞こえてきます。鳴き方に特徴があり、聞きなしは「ツキ ヒ~ホシ ホイ ホイ」すなわち、月、日、星、ほいほい だそうです。
月、日、星の三つの光で三光。
何とロマンのある名前でしょうか。
朝もやの林の中から聞こえてくる“三光鳥”の声に思わず笑みがこぼれます。
初夏、子育てのために東南アジアから日本に飛来する、青い目と長い尾羽に特徴のある鳥。警戒心が強く、なかなか目にすることができません。
隔王板
2010年5月23日 / 養蜂場日記
下の箱は産卵・育児専用、上の箱は貯蜜専用、というのがオーソドックスな巣箱の仕組みになっています。
そのために上下の間に特殊な仕切り板をはめ込み、女王蜂を下の箱にだけ留めるという方法がとられます。
隔王板と呼ばれる仕切り版は細い鉄線が組み込まれ、働き蜂は自由に出入りできますが、体の大きい女王蜂と雄蜂は通り抜けることができません。
女王蜂は下の箱にだけ産卵、食べるだけの存在である雄蜂は貯蜜から遠ざけられるという、二重の効果をもたらすのが写真の“隔王板”です。
上の箱には9枚~10枚の巣枠が入っており、蜂蜜でいっぱいになった時点で取り出し、遠心分離機にかけて採蜜します。
養蜂家至福の時です。
目には青葉、山ホトトギス~
2010年5月19日 / 養蜂場日記
この季節になると、はるばる海を渡って、子育てのために日本にやって来る鳥たち。その中の一種に托卵で知られるホトトギスがいます。毎年、養蜂場の周囲の森にもやってきます。
今年の初音は5月12日、「トッキョキョカキョク」あるいは「テッペンカケタカ」と聞きなすそうですが、毎年のことながら、この声が聞こえてくると何かしらほっとするのです。
思わず、口ずさんでしまいます「卯の花の匂う垣根に~ホトトギス早も来鳴きて 忍び音もらす夏は来ぬ~♪」
ウグイスやヨシキリの巣に托卵することが多いそうですが、たしかに養蜂場の周囲にはウグイスが多いようです。
これからは、家に帰っても「トッキョキョカキョク、トッキョキョカキョク」が耳について離れない日々が続くことになります。
ただ、気になることは昨年あたりから、急に鳴き声が少なくなったように思われることです。一日中、養蜂場一帯のあちこちから聞こえていたのが、かなりの間をおいてしか聞こえてこなくなっています。インターネットの記事にも同じ感想を述べているものがありました。全国で起きているようです。
秋から冬を過ごす東南アジアの生息状況に異変が生じているのでしょうか? タイなどでは森林面積が激減しているという報道がありますが、関係ありそうです。
何か「ホトトギスよ、君たちもか!」といった気持になります。
それぞれの生き物がいきいきと生活し、繁栄できる自然環境の大事さを、身をもって実感しています。
煙とハチ
2010年5月17日 / 養蜂場日記
養蜂家の必需品に燻煙器があります。文字通り、燻(いぶ)して煙をだす道具です。
その昔、ミツバチが野生であった頃、森や林ではよく火事が起きていました。その度に、彼らは緊急避難をしなければなりませんでした。
何も持たずに逃げ出しては、後の生活に影響が出てきます。貯めてあった蜜を大急ぎでお腹に詰め込んで避難していたのです。
人間の手で飼育されるようになった現在でも、煙に出会うと本能的に行動してしまうのです。
蜂蜜でお腹がいっぱいになると機嫌がよくなり、よほどのことがない限り人を刺すことはありません。煙を使って蜂をおとなしくさせるなんて、先人も面白いことを考え付いたものですね。
燃やすものは植物性の繊維であれば問題なし。間違っても化学繊維を使ってはいけません。その刺激臭に彼らの怒りが爆発してしまいます。
たいていの養蜂家が、コーヒー豆専用の空麻袋を使っています。
海外からコーヒー豆を詰めて日本に着いた麻袋は、ほとんどが使い捨ての状態、とても安く手に入ります。燃やし易いように小さく裁断していると、残っていた豆がぼろぼろとこぼれ出たりします。
こんな時はついつい、南米や東南アジアのコーヒー農園を想像し、遂にはそこで採れる“コーヒー蜂蜜”にまで行き着くのです。ちなみに、ベトナムはこのコーヒー蜂蜜を輸出しているそうです。
内検(内部検査)
2010年5月15日 / 養蜂場日記
養蜂家は“ナイケン”と呼びます。日常活動の一つですが、とても大事なものです。
1.女王の生存 2.産卵状況 3.蜂児の成育状況 4.健康状態 5.生活蜜の貯蔵状況 6.花粉の貯蔵状況 7.王台の有無 等のチェックを行ないます。どれか一つでも異常があれば、迅速な対応が必要となります。
対応を怠ったり、誤ったりすれば、大事な蜂群を失うことになりかねません。
「暑いから、寒いから、疲れているから、明日にしよう」などということは許されません。
「Bee first ―先ず蜂ありき」が養蜂家のモットーです。
しかし又、このナイケンは、神秘の昆虫のワンダーランドに足を踏み入れることでもあります。
産卵する女王を円形に取り巻き、口移しでローヤルゼリーを女王に与える働き蜂。8の字ダンスで仲間に花の在り処を教えている蜂。巣房の中に直立している卵は、昨夜から今朝にかけて産み付けられたもの、巣房の底に横たわっている卵は3日前に産み落とされたもの。巣房の上部の蓋を破って、今まさに生まれ出ようとしている白っぽい新生蜂。新しい巣房作りに熱中するグループ。
そこには数万匹のミツバチがそれぞれの役割を演じる壮大なドラマがあります。
巣門観察
2010年5月14日 / 養蜂場日記
経験を積むにつれ、巣門を出入りするミツバチ達を観察することで、その群が今どんな状態にあるのか、ある程度予想できるようになってきます。
午前・午後の2回は、必ず全群の蜂の動きをチェックします。
少しでも異常のある群は内部検査で確認し、必要があればすぐに対策を取ります。早めに手を打つことがとても大事です。
大事な巣門観察ですが、私の場合は仕事というよりはむしろ“楽しみ”といった方がよいのかも知れません。
飛び出していく蜂、帰ってくる蜂でごったがえしている巣門では、いろいろな事が起こります。
蜂同士の衝突墜落、間違って入ろうとする他群の蜂とのいざこざ、帰還飛行でへとへとになり、ポタッと音を立てて墜落、しばらく動く元気もない蜂等、と見飽きることがありません。
元気いっぱいで飛び出し、両足に大きな花粉ボールをつけて、時速30キロのスピードで急ぎ帰ってくるミツバチ達は、とても愉快で頼もしい存在です。時間を忘れて見ていることもしばしばです。
王台
2010年5月13日 / 養蜂場日記
女王候補の育つ特別室。ピーナッツの殻みたいに見えますが、この中で、その群の命運を決めるような役割を持つ、未来の女王が育っています。
時間が経つにつれて、先端が茶色に変色してきます。
12日目に殻を破って出てくるのは、働き蜂ほどの大きさながら、一目でそれと見分けられる色と形の女王候補です。
しかし、この時点では、他の蜂たちにとって彼女は単なる仲間にすぎません。
婚姻飛行の後、本来の成熟した女王として、女王物質といわれるものを分泌するようになって、初めてその群で認められるのです。
このピーナッツの殻には、ローヤルゼリーがいっぱい詰まっています。
市販されているローヤルゼリーは、人間の手を加えて王台をたくさん作らせ、その中に詰められた”王乳”といわれるものを取り出したものなのです。
ローヤルゼリーのみが女王の食べ物です。他のものは一切口にしません。
働き蜂の寿命がせいぜい1ヶ月なのに対し、女王は2~3年、中には5年間生きていた例もあるそうです。
不老長寿の薬としてもてはやされる筈です。
アカシアの花
2010年5月11日 / 養蜂場日記
昭和30年代後半、当時の人気歌手・西田佐知子がヒットさせた“アカシアの雨がやむとき”という歌がありました。
この写真の樹木、そして花が、その“アカシア”です。
五月雨の季節がよく似合う花―――樹の下には甘く、フルーテイな香りが漂っています。
我が家のすぐ近くに大学があり、構内の一角に10本ほどのアカシアの樹があります。今が満開の状態(写真)。
養蜂場周辺のアカシアも、あと1週間ほどで開花します。我が家のミツバチ群団もその時を今か今かと待機中です。
正確には、アカシアという名前の樹木は別にあるのですが、花が咲くのがまだミツバチが活動していない早春なので、蜂蜜は採れません。ミツバチが好む写真の樹木は、実は“ニセアカシア”と呼ばれるものです。
しかし、一般的にはこのニセアカシアの方が本家”アカシア”として幅を利かしているようです。